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どれだけ目を閉じ続けても眠れない夜だった。
カーテンの隙間から差し込む街路灯の光が、部屋の輪郭を薄ぼんやりと照らし出す。わたしはむくりと身体を起こすと、ベッドから片足ずつ降りた。
頭がくらくらする。
肌に纒わりつくようなぬるい暑さが部屋に充満していた。汗のせいで服が肌に張りついて気持ち悪い。わたしは冷蔵庫から飲料水のペットボトルを取り出しながら、スマホのホーム画面を見た。
0時半。
ペットボトルの冷たさが手のひらに心地良い。中身をひと口飲んで、ペットボトルを冷蔵庫に戻す。
カタカタ、と微かな音が聴こえた。ベッドの傍にある扇風機の音だ。古びたそれは、乾いた音を立てながら辛うじて回っている。
コンビニに行こう。ふと思い立って、わたしは動き出した。
汗に濡れたTシャツを脱ぎ捨てて、干しっぱなしの白地のTシャツに着替える。ハーフパンツを短パンに履き替え、スマホと財布だけを手に持ち、サンダルを履いて部屋を出た。
扉を開けた瞬間、じっとりと湿った空気が頬を撫でた。それでも、部屋の中よりは外の方がだいぶ涼しい。
コンビニはアパートから徒歩五分のところにある。人通りはすでになく、わたしは街路灯の光を繋ぎ合わせるような道を、小走りで進んだ。
危ないと、頭では解っていた。こんな夜中に女が一人で歩き回るなんて、危険極まりない。
今夜だけ。わたしはそう呟いて、サンダルを踏みしめた。
大学生の集団が花火で騒いでいるらしく、どこからか甲高い笑い声が聴こえる。眠りについたふりをした住宅街は、わたし達を持て余し、片目だけを開いてこちらを見ていた。
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