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金曜日、放課後の図書室。
時計に目をやると、もうすぐ午後四時。
カーテンの隙間からこぼれだした西日が、本の匂いが充満するこの部屋を蜂蜜色に溶かしだす頃。
あたしが時計から目を外してドアの方に目をやった、その時だった。
また、彼が来た。
ほとんど音を立てることのない、やさしく控えめなドアの引き方ですぐに彼なのだと分かった。
女の子みたいに艶々のその髪は、彼が歩くたびにサラサラと揺れる。肌は真っ黒な髪と対をなすように、なめらかな白。真珠みたいにきらめく、きれいな肌。
真新しいピカピカの学ランに包まれたその身体は、男の子にしては華奢な方。でも、制服の裾からちらりとのぞくその手は、女の子よりも一回りも大きくて、ところどころ骨ばっている。
中性的。
この言葉が彼以上にぴったり当てはまる人を、あたしは知らない。
彼の名前は、月島 直翔。
この春から入学してきた、あたしの一つ年下の後輩だ。
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