「君以外興味ありません」

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ひとりのその質問にもみじくんはゆるりと口元を緩めた。 え? すると突然手首を引かれ、もみじくんの腕の中に捕まる。 一瞬の出来事に私の頭もみんなの頭も上手くついていけておらず。数秒の間のあと、ロビーには「キャーッ」という黄色い悲鳴が響いた。 もみじくんはそんなこと気にもせず、にっこり微笑みながら「ああそうだ」なんてなにかを思い出したように唇を開いた。 「さきほどの皆さんの質問に答えさせていただきますね」 「え、もみじ…くん?」 なにを言うつもりなんだろう……。 じろりと捕まった腕の中で彼の表情を盗み見ればなんだかとっても楽しそうな表情。 私の今後を考えて彼女たちをあまり刺激しないでいただきたいのだけれど……。 「僕はここで、あんずと待ち合わせをしていました。この会社の取引先ではないので案内は結構です」 質問にひとつ、ひとつ答えるもみじくん。 「名前は、瀧 紅葉と申します。仕事は、俗に言う商社マンです。彼女持ちです」 ちらりと、もみじくんと目があった。 「あんずとは皆さんがもうお気づきな関係です」 伏せてはいるけども、伏せきれていないその言葉。 「皆さんを紹介されても僕、彼女以外に興味ないので、皆さんのなにやらダダ漏れな期待にお応えす出来ず申し訳御座いません」 カァッと顔が熱くなる。この距離で、みんなの前で、彼は私を殺すつもりだろうか。どきどきが早くなって息苦しい。
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