二、知らぬ海の不知火は、此の空蝉にむなしく燃ゆる

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 楽しく踊る男のもとへ、同じ骨だけの人々が集まる。彼らは、男のリズムに合わせて歌い踊り出す。あっという間に、死霊の盆踊りが始まる。 「命がなけりゃあ、窮苦もねえ」  体格のいい骨が、低い声で言う。 「肉がなけりゃあ、縛りもねえ」  明朗な女の声が聞こえる。 「時間も、社会もないならば」  今度は幼い子供の声だ。 「歌い、遊んで、踊らなば」  そして老人のしわがれた声。 「肉がなけれど、憎まれる!」  最後に男が、歌う。  誰かが、骨の群れに水をぶちまける。かかった、液体は骨の表面につくと、すぐに沁み込んだ。男は、その水が普通でないことに、すぐ気がついた。熱い快感が骨身にしみて、爆発する。酒だ。恐ろしくキツイ酒だ。 「浴びるように酒が飲めるなんて、最高じゃないか!」  踊りが加速する。同じく酒を浴びたまわりの者たちも男も皆だ。  こうして、彼らは誰かの骨が折れるまで踊った。
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