第2章 歯車

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第2章 歯車

父が出て行ってからの家の中はまるで雰囲気が変わった。 5人で囲んでいた食卓が4人。 5人で食事をするために買った食卓テーブルも4人で囲む。 だが、4人で囲むのもほんの少しだった。 父が家を出て行った途端、母は夜遊びに明け暮れた。 頻繁になる電話。母は携帯が鳴ると 食事の準備をしていても 食事中でも電話に出る。 電話をしながら何も言わずに玄関に向い そのまま朝まで帰ってこないことも多々あった。 兄は父が家を突然家を出た事と、家空けるばかりする母に激しく苛立ち 暴力が増えた。 母と取っ組み合いの喧嘩も何度も見たことがあるし、まだ建ったばかりの新築の家はドアは壁に大きな殴った穴が今でも残っている。 兄は母に 夜遊びの事と 勝手に別居になった事に対して何度も怒鳴っていた。 だが 母は夜遊びをやめることはなかった。別居になった事に関してもきちんとした説明はなかったし、反抗期だった私は聞きたくもなかった。 反抗期といえど まだまだ母が恋しい年齢である。 小学生の妹と 片づけをして お風呂に入って遊びにでた母を「お利口」に待っていた。 はじめは午前1時頃には帰ってきた。 妹と二人で「おかえりー!」というと 「起きて待っとってくれたん!ありがとう!」と母は言った。 留守番は寂しかったが 母のその「ありがとう」の言葉と笑顔を見ると嬉しかったのでそのためなら「お利口」に留守番することができた。 いつものように母が出かけ、妹と夜中遅くまで起きて待っていた。 その日はなかなか帰ってこなかった。 すでに3時を回っていた。 飲みに行ってくる と言って毎回車で出かける母。落ち着いて考えたらおかしかったが、子供の私たちにはおかしなことに気づかなかった。 午前4時すぎ。 エンジンの音だ。やっと母が帰ってきた。リビングでうたた寝していた私達も飛び起きて 「おかえり!」と言って母を迎えた。 だが、母はいつもと違った。「いつまで起きとるん!いい加減寝なさい!」と怒鳴った。 怒られた私たちはびっくりした。4時は起きてちゃだめなんだ。1時や2時だったら怒られないかな。それなら褒めてくれるのかな。 そう思いながら小さく「はい。。」と返事をして布団に入った。
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