裏山

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裏山

 家での一人遊びに慣れた僕は野外での遊び方に見当もつかなかった。だから、ただ歩き回るだけだった。  山がちな場所で家の裏にも山があった。そこまで高くなく、僕でも登れそうに思えた。ふもとの細い道を見つけると好奇心に背中を押されて僕は意気揚々と登った。  予想に反して道は険しかった。何回か息をついて、ペースを乱さないように足を進める。しかし段々と休憩を挟む間隔が縮まり、終いには足を前に踏み出せなくなった。  引き返そうとは思っても、せっかく登れたのだからという思いが僕を留めた。息が上がって発作みたいな状態で戻って迷惑をかけたくなかった。  休めば息苦しさが解消されるはずなのに、いつまでも空気が吸いづらいままだった。ここでやっと僕は本当に発作が始まったと気付いた。  吸入薬の使い方は習ったから自分でもできる。しかし持っていないのでは全くどうにもならない。助けを呼ぶための大声は、今の狭まった気道では出せなかった。  立っていられなくなって、僕は膝を突いた。意識は意外にハッキリとしているけれど、体に上手く力が入らなくなる。間もなく僕は目すら開いていられなくなった。
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