0人が本棚に入れています
本棚に追加
キヨコ
僕は目を覚ました。呼吸は不思議と軽かった。病院かと思ったけど、僕は相変わらず森の中にいた。頭上に木の枝が密集して日差しが遮られ、いくらか涼しい。
「良かった、起きた」
少女が僕の顔を覗き込んだ。長い黒髪がゆらゆらと揺れた。日陰で涼しいとはいえ夏の昼間で暑いはずなのに、少女は汗の一つもかいていない。
「君は……?」
「キヨコ」
「この辺りの子?」
少し悩んでから彼女は頷いた。
「えっと、僕は……」
「倒れてたから。もう大丈夫?」
息苦しさは全くない。それどころか、いつもより息の通りが良いように僕は感じられた。
「お母さん、心配してると思うよ」
彼女に言われて僕はハッとした。また発作が起きたら危ないから、すぐに家に帰るべきだった。
僕は立ち上がって泥を払い、下に続く道に入る。去り際に僕は振り向いた。
「明日も会える?」
キヨコは笑って答えた。
「またおいで」
最初のコメントを投稿しよう!