229人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前は好きなようにすればいい。俺だって優月だってそうしてる」
「でも兄さんが……」
カケルは首を横に振った。
「お前がやりたいようにやるのが一番の幸せ。優月もそう思ってる。あれはその……あの時の言葉も嘘じゃない気持ちだとは思う。でも考えは同じ。協力する。お前がやりたいことが出来るように、海の向こうの行き方教えてやるよ。それが知りたくて俺に話をしたんだろう?」
それもあるけれど、って、俺は口ごもる。
本当にいいのかな。俺我が儘じゃないかな。いや我が儘だ。
でもその我が儘をカケルも兄さんも許してくれるって。
「水臭いな、家族だろ」
俺はカケルを見上げた。
月明かりと机の灯りだけが優しく照らす部屋で、カケルもまたそんな風に笑ってる。
俺はちょっと深呼吸して、カケルの胸に抱き着いた。カケルは俺の頭をわしゃわしゃ撫でてくれる。
「そのユキくん、ってなんて言う名前なの?」
「……文雪。神野文雪」
ふみゆき……とカケルはなにかを考えるように呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!