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顔をそらしてしまうけど、それももったいないような気もして、ちらちら見てしまう。冷たい目を向けられていても、やっぱりこの人がずっと見てた人って思うと、痛いくらい悲しいのに思ってたよりかっこいいとか、こんな声なんだとか、想像以上に静かで落ち着いた声だなあとか身長思ったよりでかいなとか、あ、雨粒に反射してる髪が青色に光ってる、綺麗だなあとか思っちゃうのはなんでだろうか。
それは惚れた弱みってやつです。死にたい。
「なんか用なの?」
一歩後ろに下がって俯いた。
目から温かい粒がぽろぽろ落ちてきた。3秒で止まれ。3秒で止まる魔法をだれかかけてください。こんな冷たい態度を取られた挙句こんな情けない姿見せてしまったら俺が俺でいられなくなってしまう。
「……なんもねえよ」
「……じゃあなんでいつも店覗くんだよ、冷やかしなら帰れ」
なんでそんな酷いこと言うの?
ただ見てただけじゃん……ああ……それが気持ち悪かったのか。
それだったら悪いことしちゃったんじゃないだろうか。
他人を不快な気持ちにさせてしまった……それってよくないことだよな?
だってそれが片思いの人ならなおさら。
酷いこと言われるくらい酷いことしちゃったって気付いたら、もう3秒で止まるどころか30分かかっても止まらないような後悔が目からつぶつぶになって出始めた。
「雨が……降ってたから」
鼻声だ。気付かれたらまずい。
「はあ?」
「雨が降ってたから! ばーか! お前なんか知るか! ばーか!」
「え……泣いてんの?」
なんで下向いてんのに気付くんだよ! 最悪だ!
「泣いてねえよ! お前の目は節穴か!」
もういいやと思って顔を上げて思いっきり睨みつけた。
彼の目が髪と一緒の色にきらりと輝いた。流れ星みたいに一瞬だけ。
「泣いてんじゃねえかよ」
動揺している声だった。
「雨粒だよ! 二度と来るか! ばかやろー!」
「あ、……おい!」
俺は勢いよく駆け出した。もうここには来られない。こんな醜態晒しちゃったんだから。俺が俺でなくなっちゃった。ロウファが水たまりを弾いてスタッカートの音符みたいに飛び跳ねていく。
あ、っと思って。立ち止まった。
これだけは言わないといけない。
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