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振り返ったら、彼はまだ軒先にいる。雨に打たれてきらきら青く光ってる。綺麗。自分の髪からも雨粒がぱたぱた落ちてきて、目からは温かい粒が流れていて、鼻からしょっぱい鼻水が垂れていて、もう最高に気持ち悪いのが自分でも分かる。これはさすがに気持ち悪い。
4、5メートルくらい離れていたけど、雨もざーざー降ってたけど、それでも聞こえるように、と大きく口を開けた。
「気味悪がらせて、ごめんなさい」
鼻声が頭に響いてうるさかった。頭を下げて、逃げるように踵を返した。
すごい悲しかったけれど謝った分少しだけ胸が軽くなった気がする。
自分が納得したいだけの謝罪だったけれど、言わないよりはずっといい。気持ちは言わなければ伝わらないのよってばあちゃんが言ってた。悪いことしたと思ったら謝るんだよって、優月兄さんにはちびの頃から言われてる。
それで、それはまっとうな意見だと思う。
これでよかったってことにしよう。
今はただ、今すぐ自分の部屋に閉じこもって泣いてしまいたい。
走っているせいで息が上がる。喉が痛いし顔もぐちゃぐちゃなのに。思うことはやっぱり、あの人素敵な人だったなってことだった。
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