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すっと伸びてきた手らを払いのけて、ベルギーチョココロネパンはゲットした。しかし、ここからが勝負どころだ。次に狙うのは、バーガー。たとえ己が豚になろうともこの戦争に勝つ!
豚どもの悲鳴か否かは知らない。奇声を発して、戦場の盾(イージス)に、僕は立ち向かう。
僕が戦場の盾と呼ぶその男は、巨漢の相撲部の勘吉先輩だ。他の先輩の攻撃を、ものともせず、この巨体で塗り壁のごとく立ちはだかり、うまくパンを購入できるから伝説の人なのだ。
そう、これは体格差だ。でもここはパンの奪い合い。パワー勝負ではないから、ひょろい身体で存在を消し去り、戦場の盾からできた隙間を利用して、一つのパンを勝ち取れそうだった。
「よし、いける!」
そう思って、油断した。その瞬間――。
「ところがどっこい、そうは問屋が卸さない」
パチンと音を立てて、僕の手のひらをチョップされる。
「あ……!」
僕は、ショックのあまり、エコーがかって聞こえた、自らの声を聞きながら、その瞬間を見ていた。白い手が、僕が勝ち取るはずだった、パンを、手を滑らせたことをいいことに、横取りする。まさに、パンに手が着床する寸前に、だ。
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