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そう、僕の名前は、九雲 定(くぐも さだし)。だけど、おっちょこちょいな性格から、サダメと呼ばれている。まあ、語呂でいっても、定はサダメにも読めるけど。ちょっと、いじめられっ子的なあだ名になっている。ブツというのは、友人の吉野幸也(よしの ゆきや。以後ユキヤ)の頼まれごとのことだ。こいつは、チビで力の弱いやつだけど、借りがある。たとえば、ジュースを毎日差し入れしてくれたとか、そんな小さなことだった。何気なしに、こいつを可愛がっていた僕は、「何か、うまいもんを食わしてやろう」と、調子に乗って言ってしまったのだ。「俺に任せておけ」というような感じで。
「すまん、さすがに売り切れだった」
「うっ、ううっ、俺のハンバーガ~!」
つまりは、そう、ハンバーガーは、友情のためのパシリ。だからこそ、優先順位こそは低かったが、どうしても負けたくはなかった。
「ユキヤ、バーガーはあきらめてくれ。その代わり、チョココロネ半分やるよ」
「そんな、肉には叶うはずがない!」
戦場のルーキーは、つらいぜ。僕もユキヤも、がっくりと肩を落とした。
「だから、無理だって言ったのよ。子豚ちゃんたち!」
やってきたのは、上から目線のタメ女、坂口花梨(さかぐち かりん。以後カリン)だ。
カリンは、自慢の内巻きの茶髪を、耳にかけながら、その唇をニヤニヤさせていた。そして、勝ち誇ったように威張り散らす。
「戦場の盾だか何だか知らないけど、上には上がいるのよ、子豚ちゃん!」
人を豚扱いする奴がここにもいるのか。僕は、カリンの態度に、苛立ちながらも、なんとか返事はしてやった。
「く、僕は豚じゃないぞ。ちゃんとした名前が……」
「知っているわよ、豚ちゃん! 藍(アイ)ちゃんにもそう呼ばれてたじゃない?」
「は? だれだよそれ?」
そういえば、最近、豚って呼ばれた記憶がある。
「まさか!」
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