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どうせ、僕は、かわいい子にはモテないっ。インテリだし、存在感ないし、眼鏡だからな。ましてや、戦場のライバル同士だ。(いや、僕たちには勝ち目がない戦いだったが……)それでも、なぜ、会ったばかりの彼女は、僕に敵意をぶつけるんだ?
考えていても仕方ない。僕は、気分を変えようと、唯一手に入れていた、ブツを、ガサゴソと、手提げ袋から出した。
「はあ、気を取り直して、食うか? ユキヤ?」
僕の手に握りしめた、まだ袋に入っている、ベルギーチョココロネ。その袋を、ばりっと開けると、その芳醇な香りがっ広がって、何とも蕩けそうな香りがしてきた。表情を緩めていると、いつの間にか、奴は聞き耳を立てていたかのように、こちらに振り向いていた。しばらく、口をパクパクさせていたが、さらに、二人の女の悲鳴のような声が聞こえてきた。
「「ベルギーチョココロネ~!」」
一人は、カリンの声。もう一人は、いつの間にか、窓際までやってきていた、あの藍とかいう女だ。藍は、瞬間移動してきたかのような、素早さだった。
「お前は、忍者か! ははん、欲しいのかな?」
「なっ、ち、違う!」
悔しそうに否定したのは、藍のほうだった。ふたを開けてみれば、僕にとっては、第二候補のこのパンがほしかったと見える。
僕は、これ見よがしに半分に切り分け、パンを藍に渡すそぶりをしてから、思いっきり、ユキヤの口にパンを放り込む。
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