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「……それで、誠。それは何かな?」
その日の百鬼夜行から帰宅した彼───誠と呼ばれた青年を迎え入れながら、白の髪をもつその男は、誠の腕の中の存在にぴくりと眉を山なりに引き吊らせ言うも、誠と呼ばれた青年は飄々と言って返した。
「人の子だそうです。落ちてたので拾ってきやした。ハクだってこの前、俺が百鬼夜行に出ようケンた時、言ってたじゃねぇですか。俺もそろそろ人狩りの一つや二つ覚えてもいい頃だって」
「それで生きている人間連れてきてどうするよ。こんなんただの捨て子だろうが。狩りの内にも入らねぇ。元あった場所に戻してきなさい」
碧髪の男の言葉に、誠はわざとらしく背後の空を見やると、白に言い返した。
「無理でさぁ。俺は翔ぶのが遅いんで、コイツ拾った場所まで行ってたら、戻る頃には夜が明けちまいます。百鬼夜行の翌日だけは、出歩いちゃいけねーんじゃなかったんで?」
そして腕の中の少年の体を軽く揺すぶると、
「おまえも疲れたろう、賢悟。湯あみしたらもう寝ような。そういうわけでハク、続きはまた夜にでもお願いしまさぁ」
あぁ言えばこう言う、口だけは達者に育ってしまった望月色の髪を持つ青年の後ろ姿を見送りながら、溜め息をこぼすと、碧髪の男───白は烏天狗の新を呼びつけた。
「なぁ、おまえ。あれ、どういうこと?」
言葉少なに語られれば語られるほど、この人は怒っている時がほとんど。
それもそうだろう、自身のお気に入りである人物が、大事そうに何かを抱えて帰ってきたのだ。
むしろあれをその場で取り上げて、握り潰してしまわなかったことの方が驚きなくらいだ。
尤も彼のあの笑顔───柔に細められた眼差しを見てしまったら、この元総大将が彼に手をあげられるわけないことも、自明の理だったりするのだが。
新は己が知っている限りのことを元主の白に語って聞かせた。
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