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寂しいと思っていた。だが仕事だからと諦めてもいた。だが、こんな日くらいは側にいて欲しかった。触れあって、睦言を連ね、キスをして、将来を語り合いたかった。
いけないだろう。幸せな二人を見て祝福する偽善者の裏で、愛しい人がいないのに幸せな二人を見つめて恨めしいだなんて。
教会を出た一行はパレードへと移る。オープンの馬車に二人は乗り込み、その脇をルイーズとオスカルが行く。
そして同じく付近に、式典用の馬に乗って他の団長もついてのパレードだ。
沿道からは民の祝福の声と花びら。それに控えめな笑みを浮かべながら手を振るデイジーは本当に美しくなった。
眼鏡もしっかり合った物を作れば、そそっかしさは寧ろ愛嬌と言えるレベルになったし、何より芯が強くなって内面が輝くようになった。
そして陛下は、落ち着いた男の顔をするようになった。
元より王としての顔を持つ人だが、一度それが切れれば少し悪戯で茶目っ気のある人だった。だが最近、デイジーに見せるのはそのどれでもない。一人の男として相手を支えるような、優しさと強さを持つ顔をするようになった。
沿道を見れば、仕事のない騎士団の面々が人々に混じって花を手にして投げかけて、祝福の声を上げている。
シウスはそこに、あるはずのない人の姿を知らず、探してしまっていた。
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