見えない距離(シウス)

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 祝典は教会だけではない。城へ戻ると今度は先祖と始祖の王へ結婚の報告を行い、王妃のティアラが教会の大司教からカールへ、そしてカールからデイジーへと授けられる。  これでようやく、正妃が誕生したことになる。  鳴り止まぬ拍手のその中には、デイジーの叔父、アドルフ・コルネリウスの姿もある。  彼はリリーでの事件の時、ずっと地下牢へと幽閉されていた。  食事も最低限だったのか痩せて顔色は悪かったが、幸い命には別状がなかった。  ただ、その後の憔悴は酷いものだった。自分の一人息子が主犯の一人と分かったのだから。  直後、アドルフは領地の返還と自身の監督不足を訴え、息子の罪を被ろうとまでした。だがその時にはもう、誤魔化しなど意味のない程に証拠は揃っていた。  陛下はアドルフ、デイジーに罪はなく、息子ダニエルも主なき騎士団に利用されたとして、死罪にはしなかった。何よりダニエルはまだ十三歳と成人してはいない。故に、一度だけその罪を見逃す事とした。  腕に印の墨を入れ、現在は王都とは離れた場所で幽閉をしている。人は、側仕えの少年以外は数ヶ月で入れ替えだ。妙な懐柔などをして逃げ出しては困る。     
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