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★レイバン
慌ただしい数日が過ぎて、ようやく落ち着いたように思う。
部屋でのんびりとした時間を過ごしていたレイバンは、珍しく「開けてくれ」という外からの声に驚いてドアを開けた。
「どうしたのさその荷物!」
ドアを開けるとそこには、両手に一杯の荷物を持ったジェイクがいる。皿が二枚、腕にワインの入った籠だ。
「悪い、少し手が離せなかったんだ」
「いけど。それ、ケーキ?」
皿の上には大きくはないパイが二つ。丸い、数口で食べ終わってしまいそうなものだった。
「作ったんだ、食べないか?」
「この忙しいのに、わざわざ?」
「あぁ。これが届いたからな」
肘に下がっている籠を見せて笑う。レイバンはそれを覗き込み、思わず「あ!」と声を上げた。
そこにはシャトーで出会った貴腐ワインがある。当然グラスもだ。
「食べないか?」
「食べる!」
嬉々として皿を受け取りそれをテーブルに。その間にジェイクはワイングラスにワインを注いでいる。
「忙しかったから、ご苦労さんということで」
「お疲れ様、ジェイさん。乾杯」
乾杯のグラスを鳴らし、ワインを飲み込む。甘みが口の中に広がり、香りが広がっていく。
「やっぱ美味しい、このワイン!」