【09】

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 その時から白は誠を大切にしか扱えなくなっていた。  魂の交流も誠が望まないなら無理に絡み合うことを良しとしなくなっていた。  もっとも白が欲する以上に、誠が求めてくれたから、自身の欲求に気づかないでいられたというのもある。  だがなぜ誠がそこまで魂の交流を必要としたのか、今ならわからなくなかった。  百鬼夜行の時だけではない。誠は夜な夜な散歩に興じた先で、何かをしているに違いない。翔ぶ以外に妖力を必要とする何かを。  だがそれが人間を屠る行為だったとは思いたくなかったし、誠自身から人を屠ってきた際に、あやかしが纏う穢れの気配を連れていたことはなかった。  百鬼夜行の時とて誠自身が先立って村の一つを潰そうとしたわけではなく、また潰すよう指示くれたわけでもなく、ただ引き連れていた九十九のあやかし達の暴走を止めることなくして、空から一つの村がなくなっていく様を、ただ黙って見ていただけという。他者を睥睨するあの銀朱の瞳を見開いて。  それから幾回かの百鬼の夜を過ごしたのち、誠が百鬼夜行に翔ぶ際に選ぶ村には、一定の共通項があることに気づいたのは新だった。  新はそれを白に耳打ちで伝えた。  間引きの習慣が残る村、夜這いの慣習が未だ認められている村、そんな村が対象になっていて、百鬼夜行の忌日以外の夜は、誠はそんな村がどこにあるかを探ることに妖力を用いているに違いない、と。
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