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「……ケン」  見た目はすっかり変わっていた。それもそうだろう、人間界の年月にして十年くらいは経っている。  あの時のケンの年齢を鑑みたら、今のケンは十七か八になっているはず。自分が人としての命を絶ったのと同じ頃ということだ。  それにしては自分とは比べ物にならないくらい、凛々しく男らしい男になっていたのは驚きだったが。  けれども魂の色は同じだった。あの、自分の腰ほどまでしかなかったあの時の子供が、いまやすっかり自分より背丈も高くなっているだけでなく、雄々しい顔つきをした立派なおとなになっていた。  誠は涙なしにその姿を見やること出来なかった。  生きていた。生きていてくれた。  白や劫が嘘をつくはずないとはわかっていたが、けれども白も劫もいざとなれば、自分なんかとは比べ物にならないほどの力を持っている。  もしかしてその力を用いてなら、自分を騙すことくらい出来なくないかも。そんな疑心暗鬼を欠片でも抱いてしまっていた自分を罵りたいくらいだった。  誠が思わず取り零した涙を、拾いにでも来たように、気がつけば深緑色の男に背後を取られていた。  けれどももはや何に驚けばいいのか、わからぬまま立ち尽くすしか出来なかった誠に、深緑の瞳の男はそっと背後から誠を抱き留めると、その低い声を誠の耳元に落ケン込んできた。 「あの男だろう? 白に取り上げられ、劫に人間界に戻されたおまえの宝物は。もっともあの男は劫に人間界に帰される際、おまえと過ごした記憶も、あやかしの本質を見抜く目も、取り上げられちまったようだがな。それでも本能的に俺達あやかしに惹かれてしまう資質は変わらないらしい。どうする? 誠。あいつに───会いたいか?」
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