角部屋のドアノブ

5/5
前へ
/5ページ
次へ
留守なら鍵がかかっている。 それを確認する方法。 最近ではアパートの廊下に防犯カメラが増えた。 そのため空き巣に与えられるチャンスは少ない。 何度もドアノブなどを回し、家人の反応があるか調べたいらしいのだが、近年ではセールス嫌いも多く、インターホンごときでは家人は顔を出さない。 それでドアノブとなれば、不審に思い家人は何かしらのアクションを起こす……という事らしい。 そしてその狙われる部屋はアパートの二階の角部屋だという。 一階から長い棒状のフックを伸ばし、手摺りがついている格子の壁の間から差し込む。 フックをドアノブに引っ掛けるとガチャガチャと回し、そして手早く棒を畳む。 死角になる一階の廊下から二階の角部屋の住人がどう行動するか、どんな人間か、聞き耳を立てるらしいのだ。 私が玄関に出て確認したあの夜、まさに私の真下に犯人はいたということだ。 赤ん坊が産まれてから、ドアノブを回されることはなくなった。 四六時中、授乳やら家事やらで休む暇がない。更に気も立っている。 空き巣にとってもデメリット揃いと判断されたのだろう。 幽霊と思いこみ、油断していた私は大馬鹿者だ。 とにかく、何もなくて幸いだった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加