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「どうしてこうなった」
数年前に流行った言葉が自然と浮かんでくる状態である。
コンビニの前で立ちすくみ。手持ちの残金二千円余円。数か月前には百万円ちょっとの貯金があったが、小金を持っている世間知らずな娘など騙す人間からしてみたら赤子の手をひねるようなものであった。
幼少の頃は神童と言われ、図書室の本と祖父母に買ってもらった百科事典は全巻読み、算数の分数の計算は中間式を書かずとも口頭で答えてみせ先生を驚かせたものだが、周囲には「答えを見たんだろう」といじめられた。そこでクラスメイトは後ろの真智に渡す宿題のプリントにいたずらをしたのだ。いたずらというのは数字を例えば1だったものを4や7にする3を8にする等である。いつもより真智の宿題の点数が低いことに気が付いた先生によりそのいたずらが発覚し、逆にちゃんと頭で解いていることがわかったのが明白になった。
ただ、どうやって解いているのは聞かれても真智は「目から入ってきた式が後頭部ででんぐり返しして口からコロンと出る」としか説明が出来ず、ますます変人扱いされ孤立していった。
そんな神童だった真智の人生が狂いだしたのは中学校に入ってからであった。
可愛がってくれていた祖父母が同時期に亡くなったのが真智の心に大きな暗雲を呼び込んだ。
子供と言うのは結構家庭の経済事情など理解していて、祖父母が亡くなれば年金の収入がなくなり、高校に進むだけの蓄えが無いことも家に借金があることも真智は気が付いてた。父も母も働いていたが、真面目ではなくしょっちゅう休むし入ったお金はパチンコに使うような人だった。それゆえ高校入学まではなんとか祖父母に生きてほしいと願っていた。入学金や制服代、体操服代、教科書代、地方故の高額な通学費etc・・・そこさえなんとかしてもらえたら後は学校に許可を取ってバイトし、帰りのバスは17時が最終だから4月生まれの真智はすぐに原付の免許を取ればよかった。だが、中学入学してほどなく安心したかのように二人ほぼ同時に亡くなってしまったのだ。
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