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 最初はお愛想で話に付き合っていた女の子達も、指名してくれるわけでもなく、ヘルプでもないのに相手をしなければいけないのに疲れ、相手しなくなっていた。  それでも気分を盛り下げてはいけないと、カナイは頑張って話に付き合っていた。「今月カエデ1位なんだろ?カナイちゃんも俺を選んでおけば良かったのに」  毎回待機席に来る度にそう言ってきた。  何度も言ってくるので、カナイもとうとう疲れ果て。 「選ぶも何も、フリーで回ってこなかったら席に行けませんよ」  と店のシステムを説明したら何故かむくれてしまい。大本はカナイとは目も合わさなくなった。 「あれね、カエデが自分から一目ぼれしてこの席に行きたいって言って頼んだって言ってるみたいなの。自分は惚れられたと思って己惚れてるのよね。田辺さんに聞いたらそんなことはしてないって言ってた」  と、他の女の子が教えてくれた。 (みんな色々なテクニック使ってるんだな)  と感心したが、カナイはやりたくもなかった。  だが、ある時ふっと大本は来なくなった。大本はキャバクラに来るために実は借金をしていて、もう借りれるところが無くなったからだとの噂だった。  カエデはまた同じテクニックで客を捕まえて、どんどん店に来させていた。だが、どの客もすぐに金が底をつくようで、その繰り返しだった。
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