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 他店で経験があるメグミという子が新しく入ってきた。  メグミは、如何にもヤンキーですと言った風情で、目つきが鋭く、周囲を威圧していた。  ある日、待機室で客とメールでやりとりしているとメグミがカナイに言ってきた。 「橋本さんって客居るでしょ?あの人あたしの客だから来てって言わないで」  と言うのだ。 「はぁ」  と、返事したが、呼ぶも呼ばないも、カナイは客に「来て」と言うことはなかった。いつでも世間話をするだけで、客が来たい時に来て、指名していくだけだった。  いきなりそんなことを言われたので、「来てとは言わない」と約束したが、連絡しないとは約束しなかったので、そのままにしておいた。  そして、橋本が客として来て、カナイを指名すると、通りがかった振りをして、橋本の顔面を平手で殴っていったのである。  清算をする時に店長の田辺に橋本が文句を言い、田辺がカナイとメグミを呼んだ。 「どういうことなんだ?なんで客を殴る」 「だって、あたしの客なのにカナイちゃんを指名するんだもん。カナイちゃんも来てって言わないで言ったのに!」 「来てとは一言も言ってないよ、ただ連絡取り合って、来たい時に来てもらって、指名してもらってるだけ。嘘はついてない」 「キィィィィ!」  メグミが掴みかかろうとしてきたのを、ウェイター2人がかりで止めねばならなかった。
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