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田辺はメグミには「お客さんの自由で指名するものなんだ」と諫め、カナイには「気にしなくてもいい、呼べばいいから」と宥めた。
カナイは分かってた、「来て」と言わないでの意味も。でもここは江戸時代の吉原でもない。私たちは花魁でもない。だから連絡した。もちろん、店側が指名をたくさん取っているカナイの味方になるのは計算ずくだった。
その日からメグミはカナイを敵視するようになった。
当然、そんなことがあったのだから、田辺もさすがに空気を読んで一緒の席に付けることはなかったが、メグミはその威圧感から逆にファンになる女の子も居た。
そのファンになる女の子もやっぱりヤンキーっぽい子だったので、似たもの同士なのだなと思った。その子の名前がハナだった。
田辺はハナに関しては、カナイと一緒の席に付けることがあった。
よくカナイは自分の名前を紹介する時に。
「願いが叶いそうで縁起がいいでしょ」などと客に説明していた。
それを見ていたハナは、自分の客の相手を放っておいて、こっちに口出ししてきた。
「カナイなんて、叶わなさそうで縁起悪いわ」
無表情で睨んで言ってきた。
「なんて失礼な・・・」
と声を震わせた、女の子同士は協力して客を盛り上げるもの、と思っていたので、明らかに敵意を見せてくるハナに閉口していた。
気の毒なのは2人の客である、「まぁまぁ」と客なのに宥めなくてはいけなかったのだから。
田辺に言って、なるべくハナとも付けてほしくない旨伝えると、困った顔をした。
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