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正直カナイはほっとしていた、男子もだが、女子にすらロクに話したことがなかったから何を話していいかわからなかったからだ。
付き合った人は居たけど、それも主従関係のような一方的な付き合いだったこともあり、まともに人とコミュニケーションするということがよく分からなかった。
やっていたことは、部屋の掃除とセックスぐらい。それで付き合ってると思っているのだからおめでたいと周りからは映っていただろう。
だが、それでも良かった。なぜなら、中学の時はもっと人とコミュニケーションが取れなかったからだ。
少しでも異性が平気になればいい。苦手なものを克服するように無理矢理に何かを押し込めるように付き合いを続けていた。
それでもいつかは本物の人間関係が築けると思っていたが、現実はそうはいかなかった。
「カナイさんお願いします」
尾崎が今度はカナイを呼んだ
「ユカリさんのヘルプだから、名刺は渡さないように」
と言って出入り口近くの席へと誘った。
そこには中年で眼鏡をかけた男性が座っていた。
「ヘルプのカナイです」
そう言って、マニュアル通りに左横に座る。
(さてと・・・)
何を話したらいいのか全然わからない。さぁ、話してくださいと言われてもそうそう話題なんて思いつかない。
じっとお客の顔を見てにこにこしていた。
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