70人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ
5
1週間後、なんとか頑張って出勤してはいたが、おさわりしようとする客をあしらうのに疲れもう辞めたくなっていた。
そんな時チヅルから、出勤前にごはんでも食べないかと誘われた。リョウという女の子も一緒らしい。「客と一緒に行ってそのまま同伴でもいいんだけど、女の子同士の会話もしたいじゃない?お店だとあんまり自由におしゃべりできないし」というのがチヅルの言い分だった。
18時H駅を出て、待ち合わせのコンビニ前に向かうと、もう二人ともそろっていた。
「遅くなってごめんなさい」
「大丈夫。大丈夫。私たちもさっき来たところだから」
と、手のひらをひらひらさせながらチヅルが言った。
二人とも大人っぽいというか、そのまま店に出てもおかしくないようなオシャレな服装で、チヅルはオレンジ色の洒落たカットをされたワンピース、リョウはピンクのキャミソールに薄手の白のボレロ、下はキャミソールと同系色ピンクの生地の違うミニスカートだった。
カナイの方は昨日誘われてから、自分の普段の出勤前のジーンズにTシャツじゃ浮くと思い、昼間の間に急いで買ってきた、赤いサテンのシャツに黒のミニスカートを合わせていた。それでも二人より地味に見えたが、なんとか恰好が付きそうだ。
「とりあえず行こうか」
そういうとチヅルは先頭に立って歩き出した。お店が入っているのはH駅の南側にあるショッピングモールの中とのことだった。
「1000円で食べれるステーキ屋さんでさ、お客さんと来るにはなんだかな~だし、一人で入る勇気もないから」
とチヅルは誘うときに言っていた。
確かに、女の子一人でステーキ食べてる図は少し寂しいかもしれない。
ショッピングモールまでは横断歩道を渡ってすぐだ、建物に入ると左側にエレベーターがあった。ちょうど1階に到着したところだった。
最初のコメントを投稿しよう!