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 1時間が経過し、延長の伺いに来たウェイターに「延長して」と初老の男は告げた。そしてまだきゃっきゃうふふなのである。  そこでようやく注文していたフルーツの盛り合わせが来た。ここで帰っていたら、この分の支払いはどうしていたんだろうと思った。なんとなくこういうお店だと、注文した時点で品物が来てなくても支払うことになりそうだな、とフルーツをフォークで刺しながら思った。  また1時間が経過して、延長の伺いにウェイターが来た。 「延長で」  と、にこやかに初老の男は言った。  内心まだきゃっきゃうふふが続くのかと思ったが、害もないのだしと思い直しそれに付き合った。  そして、次もまた延長することになり、その次もまた延長となった。もう今が何時なのかもわからない。 「すみません、お客様」  また延長の時間かと思っていたが、そうではなかった。 「申し訳ございませんが、当店の閉店時間になりましたので、ご精算の方をお願いします」  とうとう、閉店までカナイは残ったのだ。こんなことは初めてだった。周りを見ると、カナイ達以外の客は既に帰った後だったようだった。  周りにウェイターの男たちが集まり始め尾崎も来た。 「今日は本当にありがとうございました、お邪魔して申し訳ございません」  尾崎が普段と違う愛想笑いを浮かべて応対した。 「ああ、もう閉店なのね。しょうがないよね。で、おいくら?」  聞かれてウェイターが伝票を持ってくる。
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