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店に戻ると尾崎が聞いてきた。
「いや、それが教えてもらえなくて。名前も名無しの権兵衛さんって言われちゃいました」
尾崎は心底がっかりした顔をしてきた。
「もう、ちゃんと聞いとけよ、あれは太い客だぞ。名刺ぐらいは渡したの?」
太い客の意味がよく分からなかったが、たぶんいい客さんだってことなんだろう。
「すみません、名刺も渡せなくて」
はぁ~、と息をつくと、尾崎はカナイの肩を叩くと。
「とりあえず今日はおつかれさん、もうすぐ送りの車来るから用意しといて」
と言って後ろのレジの方に向かった。
店内に戻ると残っていたのは、ユカリとチヅルと後名前を知らない女の子だった。
「カナイちゃんおつかれさま、長かったねあの客」
チヅルがねぎらいの言葉をかけてきた。
「うん、でも次来たらどうしたらいいんだろう?何をする訳でもなくずっときゃっきゃうふふって笑ってるだけなのよ?」
「いいんじゃない?それで、客がそれで楽しんでるんだから今日と同じでいいのよ」
「そういうものなんだ」
何かあとで要求されたりしないだろうか。
「送迎の車が来ましたよ」
内田というウェイターが呼びに来た。
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