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 どこまで本気だかわからないお客を他所に、尾崎が声を掛けてきた。 「カナイさんお願いします」  もうそんな時間が経ったのかと思ったが、それほど自分も楽しんでいたようだ。 「あれ?行っちゃうの?」 「あ、はい。すみません」  すると尾崎を呼んでこっそりと「指名で」と言ってくれた。 「あ~、小野ずるいぞ。指名はしないって言ってたじゃんか」  中で一番背の低い隣の男が言った。カナイを指名した男に向かって言った。 「小野指名するの?じゃ、俺もこの子指名で」  10人ぐらいの他の仲間がじゃ、俺も俺もと指名し始めた。  2、3人は入れ替わったが、ほとんどの女の子はそのまま指名になった。 「何かスポーツされてたんですか?」 「剣道とラグビーを学生の頃にやってたよ。カナイちゃんって実は力持ちでしょ?」  急にそんなことを言われて、グラスを拭いている手を滑らせるところだった。 「え、どうしてですか」 「力こぶはそんなに無さそうだけど、血管がね、手の甲のところ浮き上がってるからそうかなって。若い女の子でそういうの珍しいからさ。あ、力入ると腕の方まで血管出るんだね」  サッと手を後ろに隠したがもう遅かった、よくこんな暗がりでそんなところまで見れたものだと感心した。
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