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 それを聞いて思い当たる節があった。ラストまで残る日が増えたら、閉店すると尾崎に絡みつくユカリの姿を何度となく目にしている。ユカリは女の子の中でもNo1ということもあってか、少々浮いている存在だった。 「でも、尾崎さん本命の子居たらしいのよ。メイコって子居たじゃん?ラウンジから来た子」  メイコとは清楚な雰囲気のある和風美人だった。逆にユカリはグラマラスなギリシャ彫刻の様な顔立ちの美人だ。 「最近メイコ来てないじゃん?どうやらユカリが邪魔して奪い取ったって話なんだよね」  リョウが続ける。 「亀田代表にもそうしろって、言われたらしい。さすがに上司の言うことには尾崎さんも逆らえなかったみたい」  亀田代表はこの地域全部のグループの店舗を管轄しているお偉いさんだ。数回だけみたことがあるが、ヒゲを伸ばしたイカツイ感じの人だった。  みんな本当に情報通だなと感心する。カナイなんて自分のことだけで精一杯で他の人のことなんて目に入ってない。要は視野が狭いのかもしれない。  というか、その前に噂話も禁止だし、ウェイターとキャバ嬢の恋愛も禁止なんじゃなかったかと、頭の中でマニュアルを開いていた。  そうこうしているうちにさっき頼んだファミリーセットが来た。結局それだけじゃ足りなくて、カルビとミノと上ロースも3人前づつ頼んだ。  みんな仕事前だと言うのにビールをがぶがぶ飲んだ。これで平然と仕事できるんだからすごい。  サエは子供を24時間の保育園に預けてくるから、とお金だけ置いて先に店を出た。 「チヅルさん、来てくれるといいね」  そうつぶやくと、ジュリは「そうだといいね」と小さく言った。
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