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 一人、また一人と通りを過ぎる男の人たち。この人達は一体どこへ向かうのだろう。私と同じような境遇のキャバ嬢のところだろうか、それとも仲間の居る居酒屋か。  一人一人に声を掛けていくが素通りされる、気分はマッチ売りの少女。あれは時期が大晦日だから今とは季節が違う。今は秋に入ろうとしてるところでまだ蒸し暑かった。  今日はいつもの名無しの権兵衛さんの客も連絡がないので来ないと思うし、小野さんもあれから週末になると、いつもの団体で来て指名してくれていたが、今日は週末じゃなくただの平日だ。 「カナイさん、指名入ったみたいです」  携帯で内田に連絡が入った。 「え?」  今日誰に連絡したか覚えてないが、その中の誰かが来たのだろうか。 「すぐに店に戻ってください」 「分かりました。チヅルさんまた後でね」 「うん、あとでね~」  いつもと変わらないチヅルさんの笑顔。 (大丈夫、きっと居なくなったりしない)  そう言い聞かせて店に戻った。  店に戻ると尾崎が席に案内してくれた。指名客は先週接客した相手だった。 「ご指名ありがとうございます、横失礼しますね」  そういって、梅田と名乗った客の横に付いた。  梅田は「久しぶり」と言って破顔で迎えてくれた。今日は2人組だった。
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