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 素直にお礼を言った。 「カナイは飯食ったのか?」  隣に座っている、山本と呼ばれた客が聞いてきた。 「軽くおにぎりを食べてきました」 「それじゃ腹減るだろ、何か注文しろよ」  手書きで書かれたと思われるメニューを見せてきた。 「ここの店主は高校の後輩がやってるんだ。味は保証するぞ」 「へぇ、もしかしてみなさんここが地元ですか?」 「そ、大学もこっち。新田とは一緒に会社やってるんだ。で、俺が社長、こっちは専務」  どうも、と新田が会釈してきた、こちらも会釈で返す。 「今日は鮟肝のいいのが入ってるから、よかったらどう?」  カウンターの中で、作業をしていた店主らしき男が声を掛けてきた。 「あんきも?」 「そ、あんこう」  そこまで聞いて、カナイの頭の中ではまんじゅうのあんこが浮かんだ。 「こしあんですか?つぶあんですか?」 「・・・・」  一瞬静かになった後、ぶっと店主を含めた4人が一斉に噴き出した。 「やだ、カナイちゃんったら、あんこじゃなくてあんこうよ!」  ジュリが笑いながら言った。腹がよじれるほど笑ってる。
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