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 山本は懐かしそうに話す。 「お前らクジラとか食べたことないだろう?上手いぞ、クジラの竜田揚げは」  カナイもジュリもクジラの肉を頻繁に見る世代ではない。 「捕鯨反対の運動が盛んだけど、いいと思うんだよね、日本は海洋資源でやってきたんだから」  男たちはそうだそうだと口々に言ってる。こういう話の場合はキャバ嬢は口を挟まない様にするに限る。白か黒かはっきりをするような話題は避けるべきなのだ。 「そろそろいい時間だし、ユニティ行くか。また尾崎に叱られるからな」  そう言って、山本は店主にお勘定をしてもらった。  4人が同伴出勤したのは12時近かった。前にジュリ達が同伴出勤を夜中の2時にしてきたときがあったらしく、さすがに日付が変わる前に来てくれと尾崎に言われたらしい。  ボックス席に付くと山本は雄弁にしゃべるタイプで、自分の武勇伝を語って聞かせてきた。  内容は、学生時代にやんちゃしていたことが中心で、相当悪だったとのことだった。 「あれはもうちょっとでヤクザとか、そっちの方に引っ張られるギリギリだったろうな」 「山本はあの時すごかったよな。他校のやつも一目置いてたし」 「ああ、今じゃ口にするのも憚られるようなこともしたもんな」  山本たちはゲームの類はあまり好きではないらしく、ひとしきり話し終えると清算をして帰っていった。 「ダブル指名もできるみたいだから、また来たらサエと指名するから」
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