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「Sやっててさ」と、まだ肩で息をしている。  Sって麻薬の隠語でスピードって意味だったと思う。効果も抜けるのも早いからスピードって名づけられたって、興味本位で読んだ本に書いてあった覚えがある。 「それを、尾崎さんも知ってるってこと?」  こくんとリョウは頷いた。  だからこうして更衣室に隠してたんだ。店の女の子が薬をやってるのを見つからない様に。 「それは、今もやってるっての?」  リョウはかぶりを振る。 「今はやってないけど、たまに気分が悪くなるの」  様子を見ても嘘をついてるのか分からなかった。カナイは薬等の方面はまったく知らないのだ。 「もうすぐ送りの人が迎えに来ると思うけど大丈夫?」 「うん、大丈夫。心配しないで」  さっきよりは顔色が良いとはいえ心配だった。 「送り、リョウちゃんを先にしてもらおうね」  いつもなら家が近いカナイが先に送られるのだが、リョウの状態だと先にしてもらった方がいい。 「いいよ、いつも通りで」 「良くないよ、大丈夫ちゃんと言ってあげるから。立てる?」 「うん」  リョウの手を握ったまま立たせた。まだふらついてる様だ。
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