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立ち上がって様子を見ている時に送りの車を用意してきた、尾崎がが更衣室をノックしてきた。
「送りの車用意できたぞ」
「今行きます」
青い顔のままのリョウの腰を支えて、エレベーターに乗った。
具合が悪そうだからと、先にリョウを送ってもらうように今日の送りの当番の柴田に頼んだ。リョウの様子を見てただ事ではないとすぐに理解したらしい。救急車を呼ぼうと言い出したが。
「大丈夫、家にはタマキも親も居るから、大事にしないで」
そう懇願して来たので、仕方なしに家に送ることにした。
車に乗っている間、ずっとリョウはぜぇぜぇと息をしていた。
カナイはその肩を撫でることしかできなかった。
リョウの自宅があるというマンションまで着くと、「カナイさんは車で待っててください」と柴田が言った。ここから先はリョウさんのプライベートな部分だから、と言って車のキーを掛けた。
それに頷くと、リョウを抱えるようにして、柴田はマンションの中に消えて行った。
時間にしてどれぐらい経っただろうか、たぶん2,3分だったかもしれないがひどく長く感じた。
柴田は車に戻ってくると、無言でエンジンを掛けた。カナイの家に着くまで二人とも一言もしゃべらなかった。
いくつかの大通りと曲がり角を曲がると、カナイの家まで着いた。
「リョウさん、タマキさんに預けたので大丈夫だと思います」
カナイが車から下りた時にぽつりと告げられた。
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