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次の月になって、世間はハロウィンの模様になっていた。
ハロウィンに掛けて、この月店ではコスプレ週間があった。内容はチャイナドレス、メイド服、猫耳としっぽ、そしてバドガールだった。
カナイはさすがにバドガールをやれるほどのスタイルの良さは無いと思い、専らチャイナドレスとメイド服だった。
月が替わっても名無しの権兵衛さんの客は相変わらず来ていた。24時ごろに来てラストまで居るのは今までと変わらない。
ただ、たまに同伴もしてくれるようになった。連絡手段は公衆電話からカナイのスマホに直接電話するという方法で、夕方に連絡がありコースは大抵居酒屋とボーリング。名無しの権兵衛の腕前はスコア200越えのかなりのものだった。そして出勤は24時でも良いと言いっておいたのだが、「それだとカナイちゃんのお給料でないでしょ」と22時には同伴出勤していた。
相変わらず、きゃっきゃうふふと過ごすだけの単調な時間である。でも、そのことは表情に出さない。
「カナイちゃん、あのね」
と、同伴の居酒屋でいつになく真剣な表情で話しかけてきた。
「お店では言えないからここで言うけどね。ユニティで変なお薬が流行ってるって小耳にはさんだんだけど、カナイちゃんは大丈夫なの?」
またその話が噂になっていたなのか、と思ったがカナイは裏も表もなく言った。
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