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あれからリョウは何も言ってこない。まるで何もなかったかのように。
そしてカナイも聞かないでいた。
「もうすぐクリスマスか」
「やだ、まだ2か月以上先じゃない」
「でも、ハロウィン終わったらすぐだよ。カナイちゃんはお客さんに何かおねだりしないの?」
そういや、誕生日だからとお客さんに何々を貰っただの。同じ商品を複数の人にねだって、1個の残して後は質屋に売るとかそんな話きいたことがある。
「いやぁ、特に何かおねだりしようとは思ってないな」
「え、うっそぉ。いつもの名無しの人には?」
「さぁ、強いて言うならケーキでも買ってきてもらおうかな」
こう答えるキャバ嬢の方が珍しいのかもしれない。リョウは心底驚いたようだ。
「欲がないね~」
元々カナイは高級品やブランド物に興味がなかった。実用性があるなら持っても良かったが、それ以上の価値を見出せないでいた。
そんな話をしている時に、通りの方から黒い車が迫っていた。
じっくりと狙いをつけるように。
二人は話に夢中で気が付かない。
「私はね、ヴィトンのバック買ってもらうんだ」
「ほうすごいねぇ、モノグラム?」
というか、モノグラムしか知らない。他のヴィトンは見分けがつかない。
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