13

5/6
前へ
/115ページ
次へ
 他愛ない話で盛り上がり、いつもの通り十八番のカラオケを熱唱していた。  カナイにもその曲を歌えるようになれと言ってきていたが、男のキーと女のキーは違うので苦戦していた。  それでもこっそり一人でカラオケに通い、1曲だけ自分の原曲のキーのまま自分の声を殺さずに歌えるようになっていた。  歌い終えると、さっきまでの殺伐とした気分が一気に吹き飛んだ。歌には不思議な力があるなと実感した。  その客も1回延長したらすぐに帰った。  エレベーターで見送ると、カナイは待機席で今日有ったことを考えていた。  ブティックのウィンドウの穴は下の方にあった、なのにリョウが怪我したのは額だった。  直接当たって居たら絆創膏で済むはずがない。ガラスの破片が額を掠めたのと考えるのが自然だろう。  だが、なんの為に?  狙ったのは足首として、何故頭や胴体ではないのか。殺すつもりならそちらを狙うのではないだろうか。  それにNO1であるユカリが狙われるなら分かる、その価値もあるだろう。だが、居たのは3位のカナイと今月はランク外のリョウだった。どうにも中途半端だ。  女同士の争い線は薄いと思う。撃ってきたのは男だったから、誰かに依頼したとしてもかなりのお金が必要になってくるだろう。  だとしたら客か?カナイには撃たれるほどのことをした覚えはなかった。色営業、つまり客に恋をさせて店に来させるといった方法は取ってない。怨恨は少ないほうだと思う。リョウの方はどうだかは分からないが、性格からして恨まれるような子ではないはず。 (あ、でも薬の件があったか)
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加