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他愛ない話で盛り上がり、いつもの通り十八番のカラオケを熱唱していた。
カナイにもその曲を歌えるようになれと言ってきていたが、男のキーと女のキーは違うので苦戦していた。
それでもこっそり一人でカラオケに通い、1曲だけ自分の原曲のキーのまま自分の声を殺さずに歌えるようになっていた。
歌い終えると、さっきまでの殺伐とした気分が一気に吹き飛んだ。歌には不思議な力があるなと実感した。
その客も1回延長したらすぐに帰った。
エレベーターで見送ると、カナイは待機席で今日有ったことを考えていた。
ブティックのウィンドウの穴は下の方にあった、なのにリョウが怪我したのは額だった。
直接当たって居たら絆創膏で済むはずがない。ガラスの破片が額を掠めたのと考えるのが自然だろう。
だが、なんの為に?
狙ったのは足首として、何故頭や胴体ではないのか。殺すつもりならそちらを狙うのではないだろうか。
それにNO1であるユカリが狙われるなら分かる、その価値もあるだろう。だが、居たのは3位のカナイと今月はランク外のリョウだった。どうにも中途半端だ。
女同士の争い線は薄いと思う。撃ってきたのは男だったから、誰かに依頼したとしてもかなりのお金が必要になってくるだろう。
だとしたら客か?カナイには撃たれるほどのことをした覚えはなかった。色営業、つまり客に恋をさせて店に来させるといった方法は取ってない。怨恨は少ないほうだと思う。リョウの方はどうだかは分からないが、性格からして恨まれるような子ではないはず。
(あ、でも薬の件があったか)
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