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 今まで知っていたサエの性格と、聞いたばかりの性格との違いに信じられない思いで居た。  知っている限り、サエは飲みすぎて、ハイテンションになって大事なことも忘れることもあったが、小さなことならあっけらかんとしているのがカナイの中での印象だった。  約束は17時半だった。今は、17時25分。そろそろ着いてもおかしくないが・・・。 「いいか、約束したことを覚えていない可能性もある。その場合は1時間を過ぎたら撤収する。いいな」  相手は一人で来ないかもしれない。仲間を連れてくるかもしれないのだ。その時の為の新田と山本の待機だった。  急に車に引き込まれて、連れ去られない様に、道路の近くには寄らない様に、また車で乗ってきた場合も、乗らない様に言われている。一応そうなったときの為に新田が控えているが、向こうは法を犯すことをなんとも思っていない人間だ。どういう行動に出るかわからないから、なるべくそのようなことの無い様にとのことだった。  17時40分。  前にジュリ達と焼肉に行った時、あの時も遅れてきたから時間にルーズなのかもしれない。リョウタがぐずっているのかもしれない。  カナイはリョウタだけでもなんとかしたかった。狂気に満ちた母親の姿をあまり見せたくなかった。  カナイの母親は統合失調症で、よく見えないものとしゃべったり、思い込みで怒鳴り散らしたりしていた。それでも親だからという理由で一緒に住んでいたが。母親の思い込みは激しく、時に暴力となっていた。  それを庇ってくれたのは祖母で、祖父と父は何も言わなかった。  ある時、母親の思い込みのルールで風邪薬を大量に飲まされた。咳を1回するごとに1錠飲むというルールだ。飲まなければ、殴られる。だから仕方なしに飲む。
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