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もちろん、薬も大量に飲めば毒になるので、当然体調が悪くなり、吐いたがそれでも飲まされた。祖母が見つけて、止めてくれなかったらカナイは死んでいたかもしれない。
そんな姿を見ているから、薬で同じような状態になっているサエの近くにリョウタが居るのは良くないと思った。
体だけでなく、心も不健康になる。カナイは子供の頃、自分の価値基準が周りと違っていると感じていた。悲しむところで笑い、泣きたいところで泣けず、怒るところで怒ることができない。自分の情緒が不安定なのが分かった。
それでも、祖母が正しい価値観を教えてくれるので、まだよかったのかもしれない。
家を出るまで、ずっと母と祖母の価値観の間で揺れていた。
カナイの中では、価値観、倫理観、衛生観、死生観等のこの世界のルールは薄氷の上に成り立っていると感じている。生育次第でどの様にも転ぶものだ。
だが、リョウタは祖父母も頼れないのだ。それがどれほどリョウタの人生に影響を与えるのか計り知れなかった。
17時55分。
まだ姿は見えない。スマホも客以外からの反応はない。
18時15分。
仕事帰りの人が増えてきた、まだ姿は見えない。
18時25分。
もう、来ないかもしれない。
18時30分。
スマホが鳴った、山本からだった。事前にスマホを鳴らしたら作戦終了の合図としていた。
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