(【12】の続き)

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 その後、どうやって賢悟の元を去ったのか覚えていない。きっと白が連れて帰ってきてくれたのだろう。  気がついたらいつもの部屋に寝かされていた。そこは劫の結界に守られたあやかしだけの世界。だけど。  次の瞬間、誠は鞍馬山の姉の眠る丘の上に居た。そしてあの時、姉を横たわらせた土の上に両手を押し当てると、人目も憚らず声を上げて泣いた。  それは賢悟を思っての涙ではなく、自分が無条件に賢悟の幸せを願ってしまうそれと同じ気持ちを、姉は自分にくれていたのだと思ったら、一番に姉の死を無駄にしてしまったのは自分の選択だったと、今になって知ってしまったからだった。  姉上は自分に生きていて欲しくて、自分の幸せだけを願ったからこそ、自分を助けようとしてくれたのだ。言葉通り自身の命を賭して。  なのに自分は失意だけに囚われ、他に何も考えることが出来ず、白に全てを委ね甘えてしまった。  こんな自分にどうして姉の死を悼む資格があろう?   こんな自分にどうして賢悟の幸せを、願う資格があろう?  誠は泣き続けた。涙渇れるまで。喉が潰れて声が出なくなっても、ただひたすらに泣き続けた。なぜ自分が泣いているのか、わからなくなるまで泣き続けた。  そしてそんな誠に気づかれないよう、木立の陰に隠れて全てを見ていた白は、知らなかった誠の激情の一面に驚く以上に、胸に宿った不可解な痛みにこそ、眉根を寄せずにいられなかった。
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