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「人間などむしろ滅ぼす価値もないものだと思いなさい。あやかしの世界は人間の上に成り立っているのだから。それに人間が居なくなってしまっては、今度はあなたの苛立ちは同じあやかしに向くだけでしょう。あなたが隙あらば白にちょっかいかけているのは知っていますよ、連。あなたの破壊衝動は、いつになったら落ち着くのでしょうね? 少しは泉を見習いなさい」
泉、とは元金熊童子のことだが、金熊童子は鬼の頃からあまり狼藉行為に加担することなく、目立つ働きは一切無かったが、いざという時に彼の助けが役に立ったことは数知れない。
そんな彼は人間の体を手にしてから、さらに目立たないあやかしとなるも、気がつけば側に居るという不思議な存在に成り代わっていた。
酒呑童子時代は誰よりも暴れることを好み、狼藉の限りを尽くした異形の物が、人間の体を手に入れ劫という名のあやかしになってからはむしろ、穏やかさを武器にあやかし共の頂点に君臨するようになった酒呑の変わりようも、連には理解出来なかった。そしてそれをそのまま受け止めている茨木童子こと白にも同調し兼ねて連は、そんなやり取りを最後に劫の里を出ることにした。
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