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通りがかりに立ち寄った人気の無い公園で、彼女はぽつりと僕に聞いてきたのだ。
「空から遠い場所?なんでまた?」
「少しでも遠くから見上げれば、その分広々と見渡せるでしょ?」
「少しでも高い場所の方が、周りの建物に邪魔されずに辺りを一望できると思うけど?」
言いながら振り向いたら、彼女は既に立ち止まっていて、ブランコの柵に寄りかかっていた。僕が彼女に近づくと、辺りをキョロキョロしながら言った。
「うるさいなぁ。細かいコトはいいの!ねぇ。どこなのよ!?」
やれやれ。そう思いつつ、答えた。
「つまり世界で1番地面の低い場所か。死海、かな?うん。多分死海だと思う。」
「へー。」
自分から聞いてきたのに、返ってきた答えには生返事をして、彼女は下を向いてしまった。
「確か死海は海抜がマイナス400mだって、前に見たテレビで…」
「あ、アリ。」
僕が言い終わる前にそうつぶやいた彼女の足元に、一匹のアリがうろちょろしていた。
「死ね。ぼーん。」
彼女は地面を蹴りつける。アリはと言うと、依然として地面をうろちょろしている。
「あ、くそ。ぼーんぼーん。ぼーん。」
彼女は何度も何度も地面を蹴った。履き慣れない白いエナメルパンプスではなかなか目標を潰せない。その内に、彼女の脚にはまだ早い真っ白なパンプスは傷つき、削れ、汚れていった。
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