空から遠い場所

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2 通りがかりに立ち寄った人気の無い公園で、彼女はぽつりと僕に聞いてきたのだ。 「空から遠い場所?なんでまた?」 「少しでも遠くから見上げれば、その分広々と見渡せるでしょ?」 「少しでも高い場所の方が、周りの建物に邪魔されずに辺りを一望できると思うけど?」 言いながら振り向いたら、彼女は既に立ち止まっていて、ブランコの柵に寄りかかっていた。僕が彼女に近づくと、辺りをキョロキョロしながら言った。 「うるさいなぁ。細かいコトはいいの!ねぇ。どこなのよ!?」 やれやれ。そう思いつつ、答えた。 「つまり世界で1番地面の低い場所か。死海、かな?うん。多分死海だと思う。」 「へー。」 自分から聞いてきたのに、返ってきた答えには生返事をして、彼女は下を向いてしまった。 「確か死海は海抜がマイナス400mだって、前に見たテレビで…」 「あ、アリ。」 僕が言い終わる前にそうつぶやいた彼女の足元に、一匹のアリがうろちょろしていた。 「死ね。ぼーん。」 彼女は地面を蹴りつける。アリはと言うと、依然として地面をうろちょろしている。 「あ、くそ。ぼーんぼーん。ぼーん。」 彼女は何度も何度も地面を蹴った。履き慣れない白いエナメルパンプスではなかなか目標を潰せない。その内に、彼女の脚にはまだ早い真っ白なパンプスは傷つき、削れ、汚れていった。
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