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4
ひとしきり彼女が蹴りあげた地面に、アリは跡形もなく消え失せ、汚らしく、小さな小さな黒い染みが残された。
「スッキリした?」
「ん~、全然。ねぇ、どっか行こう?連れてってよ。」
言いながら顔をあげた彼女は、どこか寂しげな目をしていた。
「どっかって、どこに?」
「えぇと・・・死海があるとこ。どこ?」
「死海て、それじゃ海外旅行じゃないか。どっかって、買い物とか映画とかじゃないの?」
「ううん。欲しい靴はもう買って貰ったし、映画はこれからDVDを借りて来るでしょ?」
今度は自分の靴を見下ろしながら言う彼女。僕もその彼女の靴を見ながら呆れて口にする。
「その欲しかった靴は既にぼろぼろ。」
「もう履き替えるわ、白って飽きやすくって。ね、それよりどこにあるの?死海は。」
なんとも生意気な返答をした彼女は、言いながらもう一度地面を蹴った。
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