0人が本棚に入れています
本棚に追加
8
彼女が、彼女の両親とともにタクシーに乗り込み、タクシーが発車するまで、僕は黙って見届けた。
そしてタクシーは発車して、しかしすぐに赤信号で停車した。
彼女が頭を上げた。赤信号を確認したようだ。
僕は今にも振り返りそうな彼女の後頭部を見つめ、いざ彼女が振り返ったところでどんな顔をしていいのかわからなくなり、彼女が振り返るより先に後ろへ向き直り、家路についた。
あの後、彼女は僕を振り返ったのか、それは今の僕にはもうわからないコトだった。
最初のコメントを投稿しよう!