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そう、東の大国オーステン王国から、代々結婚式に使われるという家宝の首飾りが届いたのが、一週間前。
その翌日、その大切な首飾りがなくなっていたのである。
それを聞いたエリザベートは驚き、叫び、暴れた。
「首飾り……弁償しろって言われたらどうしよう」
考えるだけで頭が痛い。
美しい宝石は好きだが、弁償させられるのはまっぴらだ。宝石はオーステン王国に代々受け継がれている家宝で、この辺りで一番高価だと言われている。
昔々、オーステン王国の初代の王様が、当時の最高級の職人を集めて、世界で一番と呼ばれる首飾りを作らせた。そして結婚した。美しい花嫁に、美しい首飾りはとてもよく似合っていたそうだ。それから、オーステン王国の王族が結婚するときは、花嫁が首飾りを身につける習慣がある。
とても高い宝石なのだ。きっと国が破産してしまう!
そして、結婚も破談になり、宝石をなくした間抜けの姫と言われ、次の結婚も決まらないだろう。
そこまで想像して、エリザベートはため息をついた。
憎き宝石泥棒!
そして、どこまでいっても薄幸な私!
それからしばらくの間、城では何度も会議が行われ、捜索隊が結成され、城の騎士団総出で首飾りを探した。もちろん内密に。しかし、その行方は知れなかった。
業を煮やしたエリザベートは、町娘の衣装を従者のシャルロッテに用意させると、盗まれた首飾りの手がかりを探すために、平服の騎士数名を連れて、城下町に出てきた。
午後になったばかりの空には太陽が輝いている。
あたりを見回すと緑がまぶしい。吹く風も心地いい。
「遊びにきたのなら、最高の天気ね」
「姫、まずは我々が聞き込みに参ります。ここでお待ちくださいませ」
「ええ、そうね。少し休むわ」
「なにかあればすぐにお声かけをお願いします」
騎士たちは一人を残して、情報収集に酒場へと入っていった。
広場の椅子に腰かけながら、街をぼんやり眺める。広場は国民の憩いの場になっていて、親子づれや近所の人たちでにぎわっている。
そして、誰もエリザベートには気づいていなかった。
お忍びなので正体に気づかれないのは願ったり叶ったりだが、内心寂しくもあった。
「宝石を盗まれて運が悪いうえに、自分の国にいても気づかれないなんて、なんて不幸なのかしら」
エリザベートはぼそっと文句を言った。
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