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しかしグチっていてもしょうがない。盗まれた宝石の行方について、エリザベートにはある仮説があった。
犯人はどうやって宝石を盗んだのか。宝物庫は高い塔になっており、周囲の建物とは離れていて、ロープで渡ってくることは難しい。壁が反り返っているため、よじ登れることもできない。
唯一の入口である扉は二人の衛視に交代で見張られていた。
空でも飛ばない限り、侵入することは不可能……そう思ったとき、リジーの中に一つの心当たりが浮かんできた。
「もしかして、ドラゴン……?」
ドラゴンを使えば、宝物庫の天窓から侵入することができる。
犯人は夜陰にまぎれて天窓から侵入し、首飾りを盗んだのではないだろうか。
しかし証拠はない。近衛兵に言ってみたが相手にされなかった。
「ドラゴンに乗ることができる人が犯人……」
自分で動くしかない。そう思った。
そうなると護衛とはいえ、騎士たちは邪魔だった。
「ねぇ、私ね、ドラゴンが宝石の盗難に関係しているんじゃないかと思うの」
「さようでございますか」
騎士は丁寧に答えた。エリザベートがドラゴン犯人説を主張したのはみんなが知るところである。
「ドラゴンを飼っている地域があるでしょう? そこから人を呼んでもらえないかしら? 貴族の話を聞きたいの」
郊外に住んでいる貴族たちは道楽でドラゴンを飼っている。そこまで往復するとなると、馬でなければ無理だろう。
「承りました。皆が戻りましたら、城で馬を調達して向かいます。」
「大丈夫よ、みんなが聞き込みから戻ったら、一度城に戻るわ。だから、馬を向かわせておいて」
「分かりました、急いで用意して参ります」
エリザベートを残すと、城へと戻って行った。
「よし、今のうちに……」
エリザベートは、騎士たちが聞き込みから戻って来ないことを気にしながら、公園から、そうっと抜け出した。これでしばらくは一人で自由に動き回れる。
そうしてエリザベートは宝石泥棒を捕まえようと、ドラゴンを探し始めたのであった。
エリザベートが王女だと知り、マルセルは明らかに固まった。
「お、王女って、あんた、なに言って……。本物の王女さまだっていう証拠は?」
「私の身分はお城で証明してくれるわ。ただ、あなたはすぐ門番に捕まると思う。宝石さえ返してくれれば、棒打ち百回で済むように頼んであげるけど」
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