第1章

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 言われてみれば、これは他人の宝飾品だ。そう考えたら、少し冷静になった。  ただ、弁償しなければならないことに変わりはない。  そんなことになったら、ブルーテ王国は破産するんじゃないだろうか。  もっと真面目に犯人を捜さないと。帰る城がなくなってしまう。 「盗まれたのは、この一週間以内。それで考えてみたの。盗んだ犯人は空から逃げたんじゃないかって。そういえば夜にドラゴンが飛んでたなって。それで配送員を捕まえようと思ったの」 「そんな理由で、疑われて、刺されそうになったの?」  マルセルは呆れた様子だが、エリザベートは腕を組んで自信満々に言った。 「私の勘をなめないでよ?」 「勘だけで動かれても困る」 「ともかく」  軽く咳払いして、エリザベートは話を続けた。 「宝物庫の入口は見張りが立っていて、そこを通った者はいないし、鍵の錠は私が開けるまで閉じられたままだったわ。もし、盗み出したあとも、宝石をどうやってお城の外に持ち出すのか、いろいろと不都合が出てくるでしょう? でも、窓からならどうかしら?」 「だからドラゴンを使ったと思ったのか」  犯行にドラゴンを使われたという推測は、マルセルも納得できたようだ。  エリザベートは続けた。 「そうよ。窓なら見張りもいないし、扉の外の見張りも気づかない可能性が高いわ。なにより、盗んだ宝石をそのまま町に持ち出せるじゃない? ドラゴンに乗って飛んで逃げられるんだから」 「それで俺だと……え、どうして、俺? 他にも配送員はいるのに……」  マルセルは納得のいかない顔をしている。 「町のあちこちで配送屋の噂を聞いたの。社長夫婦と昔からの従業員は評判がいいけど、新しく入ったよそ者は信用できないって」 「そうなのか」  マルセルは浮かない表情になった。陰口を言われていると知って傷ついたのだろう。エリザベートは少し胸が痛んだ。 「よそ者をよく思わない人がいるのは、まあよくある話よ。でも、ちょっと嫌われかたがひどい気がしたのよね。違法な物を売買しているんじゃないかとか」 「なんだ、それ? ひどい噂だな」  マルセルは眉をひそめている。 「とにかく、町の人たちの不信感を煽るようなことをしている配送員がいると思ったの。そして、新入りの配送員は髪の色がストロベリーブロンドだって聞いていたの。あなたを見かけたとき『あ、こいつが新入りだわ。犯人ね!』と思ったのよ」
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