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そう考えて、エリザベートは背筋がぞっとした。
どこかから、いつも知らない誰かに狙われているなんて、気持ちのいいものじゃない。
「和平反対派か。そういう話を聞くと、どこかのお姫さまと話してるみたいだ」
マルセルに皮肉を言われた気がする。
「和平反対派が盗んだと仮定して。宝石を盗めるかどうか試してみたいわ」
「試す?」
マルセルは話がつかめないらしい。
「今からカッスルロッシュを飛ばせるかしら? お城までいって、窓から入れるかどうか実際に試してみたいの」
さすがにマルセルは二の句が継げないらしい。
「あ、暗くなってからでいいから」
エリザベートも、ひくつもりはなかった。一刻も早く宝石泥棒を捕まえなければ。
「私、一度、お城に帰るわね。お城の裏門は分かる? 日没の鐘がなる頃にそこで会いましょう。もちろんカッスルロッシュも連れてきてね? それで試しましょう」
マルセルはがっくりと膝をついて、頭をかかえている。
「じゃあ、またあとでねー」
エリザベートが部屋の外に出ると、廊下で男の人とすれ違った。背が高くがっしりした体格をした男で、こちらをじろじろと見てきている。なんとなく感じの悪い人だ。
「こんにちは」
あいさつしないのも失礼かと思い、エリザベートは会釈した。
そのまま下宿を出て歩き始めた。天気はいいし、風もない。
今日の夜にはカッスルロッシュにまた乗れる。なんだか気持ちが浮き立ってきた。
「ふん、ふん、ふ~ん」
エリベートは鼻歌を歌いながら、機嫌よくお城へと帰っていった。
エリザベートがお城まで戻ってきたとき、騎士団たちは上の者に報告するかどうかでもめていた。宝石の紛失に続いて、姫まで誘拐されたとなれば一大事である。
「ごめんなさい。あの……一人で散歩してみたかったの」
エリザベートは素直に謝った。
「ドラゴンに乗せてもらって上空から町を見せてもらっていたの」
話のつじつまは合っている。
「私のワガママで、あなたたちが怒られるのは胸が痛むわ。このことは内緒にしておいてちょうだい?」
そう言い残すと、エリザベートは自室に戻った。
シャルロッテの部屋専用の呼び鈴を鳴らすと、シャルロッテはすぐにやってきた。
「ただいま、シャルロッテ」
「おかえりなさいませ。ああ、ご無事でなによりでしたわ」
シャルロッテはエリザベートの顔を見て、心からほっとしたようだ。
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