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おしとやかなシャルロッテを見ていると、こういうお姫さまになったほうがいいのかなとたまにエリザベートは思う。
エリザベートは自分の大雑把な性格も長所の一つだと思っていたが、シャルロッテのように、詩集を読み、外には出かけず、驚くと気絶してしまうような、そんなはかなげで美しい少女こそがまさに理想のお姫さま向きの性格だろう。
「聞いて! 町でたくさんのことがあったの」
「まあ、ぜひ聞きたいですわ」
シャルロッテが目を輝かして答える。
シャルロッテは、町でエリザベートが体験した話を楽しそうに聞いてくれる。
シャルロッテのほうが城の用事で城から出る機会も多かったが、決まった店にしか
行かず、もともと内気ということもあり、町の人と世間話をしたこともなかった。
エリザベートが話す町でのできごとは、シャルロッテにとってはキラキラとしていて、素敵な絵本のようらしい。あるときは、迷子になった犬の飼い主を捜しまわった話。またあるときはお婆さんの愚痴につき合って、お礼にお菓子をもらった話。
「まずは計画通り護衛の騎士を撒いて……」
エリザベートは今日のあったことを話し始めた。
ドラゴン配達屋について聞き込みをしたこと。ドラゴン配送員のマルセルを脅し、ドラゴンに乗せてもらい、彼の下宿先でいろいろと話したこと。
「まあ、姫さま。一人暮らしの男性の部屋に入るなんていけませんわ」
シャルロッテに注意されてしまった。
「初対面のかたですのよ。危のうございますわ」
「いや、そんな感じじゃなかったのよ」
「でも、危険なかたかもしれませんわ」
シャルロッテはゆずらない。エリザベートは少し笑って言った。
「マルセルは本当に大丈夫よ。人柄の良さだけがとりえって感じよ。ドラゴンが好きで、そのこと以外には興味がないんじゃないかしら」
「生き物が好きな人に悪い人はおりませんとは聞きますけど……」
シャルロッテは納得のいかないような口調だ。
「う~ん、シャルロッテも会えば分かるわ。ずっとずっと仲間でいてくれるような、そんな人よ」
エリザベートはマルセルの印象を話した。本当にいい人だとシャルロッテに伝えたかったのだ。
「姫さま、私の占いの通りですわ。『出会いは関わりではなく、スタートです。冒険が始まると考えてください』ですわ!」
「え、なに……?」
突然のシャルロッテの言葉に、エリザベートは驚いた。
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